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生前贈与に必要な贈与契約書とは?書き方(雛形)や注意点を紹介【司法書士監修】

生前贈与 生前贈与の手続き

生前贈与の手続き
写真:中島 美樹

監修者

中島 美樹

一般社団法人 東京都不動産相続センター 代表理事
司法書士法人あかし 代表司法書士

目次

贈与契約書は、生前贈与において必ずしも必要というわけではありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも作成しておくことをおすすめします。
この記事では、贈与契約書の書き方やすぐに使える雛形、贈与契約書を作るときの注意点について解説します。

1. 贈与契約書はなぜ必要?

まずは、生前贈与における贈与契約書の必要性についてご説明します。
生前贈与とは、民法第549条に定められた贈与の行為を自分が生きているうちに行うことをいいます。

(贈与)
民法第549条  贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

つまり生前贈与は、「贈与者が財産を無償で贈る意思表示をし、それを受贈者が受諾する意思を表示する」ただそれだけで成立します。よって、実は生前贈与の成立条件として贈与契約書は必ずしも必要でなく、口頭契約でも成立するのです。

それなのに、なぜ生前贈与に贈与契約書が必要なのでしょうか?
その理由としては、次の点があげられます。

1-1. 口頭契約によるトラブルを防げる

贈与契約書を作る目的のひとつに、口頭契約によるトラブルを防ぐという点があります。
民法第550条では、書面に残さない贈与契約については、当事者のどちらが一方的に取り消してもよいと定められています。(すでに履行された分は除く)

(書面によらない贈与の解除)
第550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、
履行の終わった部分については、この限りでない。

例えば親から子へ結婚費用として現金300万円を渡すといった贈与契約が、贈与契約書を作成せず口頭のみで行われたというケースで、子供は親からの贈与をあてにして結婚式や新居の準備を進めていたとします。
式場も予約し、新居の物件契約も進めてしまったタイミングで親子喧嘩をしてしまい、怒った親が「やっぱり贈与しない!贈与を取り消す!」となってしまった場合、贈与契約書を作成せずに口頭のみで贈与を進めていたのであれば、それも成立してしまうということです。親からの結婚資金贈与をあてにしていた子供側としては、結婚式場への支払い、新居の契約費用の支払いなどができなくなり、困ってしまいますよね。

このようなトラブルを避けるためには、贈与契約の内容をしっかりと明記した贈与契約書の作成が必要なのです。

1-2. 贈与の内容や事実を書面で残せる

贈与契約書を作成することで、生前贈与の内容や事実を、記録として書面で残すことができます。

贈与は一方的な意思表示のみでは成立せず、贈与者(財産を譲る人)、受贈者(財産を受け取る人)双方の合意によって成立するものです。お互いの合意によって生前贈与が行われた事実はもちろん、いつ、誰に、どんな財産を贈与したのかを書面で残しておくことで、後々になって起こり得るさまざまなトラブルを回避することにつながります。

1-3. 名義預金や定期贈与でないことを証明できる

贈与契約書を作成せずに生前贈与を行っていた場合、贈与者が亡くなった後の相続で税務調査が入ったときに、いくら生前贈与で受け取った財産だと主張しても、贈与契約が成立しているとみなされなかった場合には、贈与ではなく相続財産の対象となり、相続税が課税されることもあります。

例えば、生前贈与で贈与税の基礎控除の範囲内(年間110万円以下の暦年贈与)で毎年贈与を繰り返していた場合や、現金手渡しで生前贈与をしていた場合などは、生前贈与だと認められないケースも考えられます。

110万円以下の暦年贈与であってもきちんと贈与契約書を作成し、贈与の内容や記録を書面できちんと残すことで、相続手続きを行う際や税務調査が入った際に、生前贈与が行われたことを証明しやすくなるのです。

1-4. 不動産の登記手続きに必要

生前贈与で不動産を贈与するという場合は、不動産の登記手続きに贈与契約書が必要です。
贈与契約書には、「いつ、誰が、誰に、どの不動産を贈与したのか」を明記する必要があり、また一人の親から二人の子供へ不動産を贈与する場合など、受贈者が複数名となるケースでは、それぞれの持分についても記載しておかなければいけません。

2. 贈与契約書の書き方と雛形を紹介

贈与契約書の書き方は、どんな財産を生前贈与するのかによって変わってきます。財産の種類にかかわらず、必ず明記しなければならない項目は次のとおりです。

  • 贈与契約締結の日付
  • 贈与者の住所、氏名
  • 受贈者の住所、氏名
  • 贈与財産の受け渡しが行われる日付と方法
  • 贈与の対象となる財産の情報

ここからは、生前贈与の対象となる財産の種類別に、贈与契約書の書き方とすぐに使える雛形を紹介していきます。

2-1. 不動産の贈与契約書

不動産の贈与契約書を作成する場合、必ず記載しなければいけない基本の項目は次のとおりです。

いつ 贈与契約締結の日付、不動産を引き渡す日付
誰が 贈与者
誰に 受贈者
どのような財産を渡したか 不動産に関する情報(登記事項証明書のとおり)
注意すべき点
  • 地番や家屋番号を正確に記載する
  • 1年の途中で贈与契約を締結する場合は、固定資産税の支払いについて明記する
  • 印紙の貼付が必要(印紙代は対象となる不動産の価格によって異なり、不動産の価格を贈与契約書に記載しない場合の収入印紙代は200円)

2-2. 現金の贈与契約書

現金の贈与契約書を作成する場合、必ず記載しなければいけない基本の項目は次のとおりです。

いつ 贈与契約締結の日付、現金を渡す(銀行振込する)日付
誰が 贈与者
誰に 受贈者
どのような財産を渡したか 現金の金額
注意すべき点
  • 贈与の事実を明確に記録するため、現金手渡しではなく銀行振込を利用する
  • 暦年贈与など複数回の現金贈与が行われる場合は、その都度、贈与契約書を作成する

2-3. 株式の贈与契約書

株式の贈与契約書を作成する場合、必ず記載しなければいけない基本の項目は次のとおりです。

いつ 贈与契約締結の日付、株式を引き渡す日付
誰が 贈与者
誰に 受贈者
どのような財産を渡したか 引き渡す株式の情報(会社名、会社の本店所在地、株券の記番号など)、引き渡す株式の種類と数(普通株式〇〇株など)
注意すべき点
  • 非上場会社の場合、一般的に株式の譲渡には譲渡制限があり、株主総会や取締役会などの承認を得る必要がある

2-4. 生命保険の原資となる金銭の贈与契約書

生命保険の贈与契約書を作成する場合、必ず記載しなければいけない基本の項目は次のとおりです。

いつ 贈与契約締結の日付、生命保険料(現金)を渡す(銀行振込する)日付
誰が 贈与者
誰に 受贈者
どのような財産を渡したか 現金の金額、振込先の口座情報(生命保険料の引き落とし口座情報)
注意すべき点
  • 暦年贈与の場合は、その都度、贈与契約書を作成する
  • 所得税の生命保険料控除が使えるのは受贈者のみ(贈与者は使えない)

3. 贈与契約書を作るときの注意点

贈与契約書を作ったからといって、それだけで生前贈与の事実が証明できるというわけではありません。
贈与の事実をしっかりと証明するためには、贈与契約書と合わせて「銀行振込の記録を残す」「不動産や株式などの名義を受贈者に変更する」など、生前贈与の事実がともなっていることが重要です。さらに、贈与契約書を公正証書にすることで、その客観性を高めることにつながります。

また、贈与契約書があり、しっかりとした生前贈与の事実があったとしても、相続開始前3年以内に行われた生前贈与で贈与した財産は、相続税の課税対象として加算されてしまいます。この場合、年間110万円以下の暦年贈与であっても相続税の課税対象となるため注意が必要です。
相続対策として生前贈与を行うなら、できるだけ早めのタイミングで検討を始めることをおすすめします。

4. 贈与契約書でよくある疑問

ここからは、生前贈与の贈与契約書について、よくある疑問を紹介します。

A.

後から作成した贈与契約書であっても、贈与契約の内容や日付が正しいものであれば有効です。前述のとおり、生前贈与は口頭契約での双方合意が認められた時点で贈与契約が成立しているため、それを後から書面にするという作業自体は問題ないのです。

ただし、贈与契約書を後から作成した場合には、税務署から受贈者にとって都合のよい贈与契約書を作成したのではないか、実際の贈与と契約書の内容が一致していないのではないかなどと疑われてしまう可能性は十分あるため、贈与契約書は後から作成するのではなく、贈与が決まったタイミングで作成することをおすすめします

贈与契約書を後から作成する場合は、契約書の締結日を遡及して贈与契約が成立した日付とし、贈与契約書の内容については「いつ・誰が・誰に・どのような財産を渡したか」を、実態どおり正しく記載するようにしてください。

A.

贈与契約書を作るにあたって、その書式について特に決まりはありません。
前述のとおり、「いつ・誰が・誰に・どのような財産を渡したか」が明確に記載されていて、贈与者・受贈者双方の合意があれば、贈与契約書の書き方は書式に決まりはなく、手書きでもパソコンでもどちらでも有効です。

とはいえ、万が一のトラブルを避ける、後になってあらぬ疑いを招かないという意味でも、署名部分については直筆で行う、捺印に関しては実印を使うなど、贈与契約に関してきちんと本人同士の合意があったということを証明しておくことをおすすめします。

A.

贈与契約書は、贈与する財産の種類によって収入印紙が必要な場合と不要な場合があり、不動産の贈与に関しては必ず印紙の貼付が必要です。

不動産の贈与契約書に貼付する収入印紙の額は、対象となる不動産の価格によって変わりますが、贈与契約書に不動産の価格を記載する必要はないため、価格を記載しない場合は200円の収入印紙を貼付するだけで済みます。
贈与する財産が現金・株式・生命保険など不動産以外の場合には、収入印紙の貼付は不要です。

A.

未成年でも受贈者として贈与契約書に署名捺印することは可能です。
中学生や高校生であれば、自分で署名することも十分できるでしょう。とはいえ、未成年の場合、まだ贈与に関する理解や認識が不十分とみなされるため、単に金銭等を受け取る以外の負担付贈与や、未成年者が贈与者となるときには、親権者が未成年に代わって契約書に署名捺印が必要となります。また、未成年に対して贈与された財産は親権者が管理を行い、贈与税がかかる場合には贈与税の申告も必ず行うようにしましょう。

なお、受贈者が高齢者や手が不自由な方など直筆の署名ができないという場合は、パソコンなどで氏名を入力し、捺印だけを本人が行うという形でも問題ありません。ただし、どんな形であっても、契約者双方の合意があるということが大前提となります。

5. 最後に

今回は、生前贈与に必要な贈与契約書について、必要性や書き方、注意点を紹介してきました。生前贈与は口頭でも成立する契約ですが、後からトラブルになってしまわないように、「いつ・誰が・誰に・どのような財産を渡したか」を明記した贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。

また、贈与契約書を作成し、生前贈与の内容や事実をしっかりと書面に残したとしても、相続開始前3年以内に行われた生前贈与で贈与された財産は、相続税の課税対象となってしまいます。相続対策として生前贈与を始めるなら、できるだけ早いタイミングがおすすめです。

  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
写真:中島 美樹

監修者

中島 美樹なかじま みき

一般社団法人 東京都不動産相続センター 代表理事
司法書士法人あかし 代表司法書士

プロフィール
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東京司法書士会所属。司法書士試験合格後、司法書士試験の受験指導の講師を経験。都内司法書士法人で登記業務に従事し、その後独立開業。
年間100件近くの相談実績から、まずは現状を把握していただいたうえで、対策をオーダーメイドしてまいります。人生に何度もあるわけではない相続という経験を、心穏やかに過ごしていただくため、争いを防ぐ財産の分配方法を提案することはもちろん、なぜそのように財産を分配したのか想いの部分を大切にし、相続に心を込めた想いが続く想続を目指し、お客様のサポートをさせていただきます。
一般社団法人 東京都不動産相続センターhttps://fudosan-sozoku.or.jp/

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