不動産にかかる相続税の基礎知識と相続税の計算方法【税理士監修】

相続・贈与 相続税

目次

不動産の相続税はどのように算出されるのでしょうか。
この記事では、不動産にかかる相続税の基礎知識について解説したうえで、効果的な相続対策や特例についての知識、相続と贈与の違いなど、子や孫になるべく多く財産を残す方法について解説いたします。

1.相続税の基礎控除

相続税とは、被相続人から財産を相続した配偶者や子どもなどの相続人が支払うべき税金です。相続税の基礎控除額は、下記の計算式によって決まります。

3,000万円 + (法定相続人の数 × 600万円)=【相続税の基礎控除額】

相続税は、基礎控除を差し引いた分の課税遺産総額についてかかります。相続財産の評価額が相続税の基礎控除以下であれば、相続税は非課税になります。
具体的な金額としては、配偶者や子供などの法定相続人が相続する場合は【3,000万円+法定相続人の数×600万円】以下であれば、相続税を支払う必要はありません。

2. 不動産にかかる相続税の計算方法

ここからは、不動産にかかる相続税の計算方法について解説していきます。

相続対策として重要なポイントが、現金と不動産の相続税評価額の違いです。
例えば相続財産として現金が5,000万円あった場合、評価額はそのまま5,000万円になります。しかし、例えば時価5,000万円で購入した不動産の場合、評価額は5,000万円ではなく、土地であれば路線価(時価の7~8割程度)、建物であれば固定資産税評価額(時価の7割程度)で評価されます。
つまり、5,000万円程度の土地であった場合、5,000万円×80%=4,000万円程度の評価になるのです。
またその土地を人に貸している場合は、借主に借地権があるためさらに評価額が下がります。

このように、相続の場面において不動産は現金より相続税評価額が下がるので、税制上有利になります。

それでは実際に、相続税の計算を、事例を用いて行ってみましょう。

前提として、夫が亡くなったことで相続が発生し、法定相続人は妻と子ども2人であると仮定します。
遺産は、6,000万円の現金と、遺産評価額が土地建物合わせて4,000万円の一戸建てとします。この場合、遺産の総評価額は現金と不動産を合わせて1億円です。
また妻と2人の子どもの実際の取り分は、それぞれ1/3ずつの割合だったとします。

相続税の計算の流れは以下の通りです。

  1. 遺産総額から葬式費用と借入金を差し引いて、正味の遺産額を出す。
  2. 正味の遺産額から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を出す。
  3. 課税遺産総額を一旦、法定相続人の法定相続分で分ける
  4. それぞれの法定相続分を相続税税率表に照らし合わせてそれぞれの相続税を出す。
  5. それぞれの相続税の合計額を、実際の取り分を元に分割して、各相続人の最終的な相続税額を計算する。
  6. 配偶者については、 「配偶者の税額軽減」を適用する。

それでは、事例について具体的に計算していきましょう。

まず1億円から葬式費用と借入金などの債務を差し引きます。ここでは葬式費用に500万円、債務が500万円だったとし、計算すると1億円-500万円-500万円=9,000万円となります。
さらにここから相続税の基礎控除額( 3,000万円+{3人×600万円}=4,800万円)を差し引いて、課税遺産総額を算出します。基礎控除額は4,800万円なので、9,000万円から差し引いて課税遺産総額は4,200万円となります。 この4,200万円を法定相続分で按分すると、妻は1/2、2人の子どもはそれぞれ1/4として分け合うため、1人あたりの課税価格は以下の通りになります。

  • 妻:4,200万円×1/2 = 2,100万円
  • 子供A:4,200万円×1/4 = 1,050万円
  • 子供B:4,200万円×1/4 = 1,050万円

相続税の税率を下記の表から確認すると、1人あたりの課税価格は3,000万円以下なので税率は15%、控除額は50万円となります。
1人あたりの相続税額は以下の通りです。

  • 妻:2,100万円×15%-50万円=265万円
  • 子A:1,050万円×15%-50万円=107.5万円
  • 子B:1,050万円×15%-50万円=107.5万円

相続税額の合計は、265万円+107.5万円+ 107.5万円=480万円です。
妻、子ども2人の実際の取り分は1/3ずつなので、それぞれの相続税額は480万円×1/3=160万円となります。

相続税の税率
決定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%なし
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」

このうち妻については、後述する「配偶者の税額軽減」の適用が可能です。配偶者の取得した財産額に対する税額については1億6千万円まで控除されるため、配偶者の税額軽減によって妻は相続税を支払う必要がありません。つまり、このケースにおいては2人の子どもそれぞれに対して相続税が160万円ずつかかる、ということになります。

相続税の計算の流れと事例

下記は、今回の事例の流れを簡単にまとめた表です。

3. 相続に関する相続税の軽減制度について

相続には特別控除や特例が存在します。不動産を含めた相続税の軽減制度について解説していきます。

3-1. 配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減は実際に取得した正味の遺産額が下記のいずれか多い金額まで、相続税が非課税になります。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

上述の例では、相続する財産額 ①の1/2の4,500万円が配偶者の法定相続分なので、1億6千万円の方が多い金額となり、妻は1億6,000万円まで相続しても相続税がかからないということになります。

配偶者の税額軽減

ここだけを見ると、妻の相続税の軽減割合が大きいため、相続時には妻に多くの遺産を遺した方がよいように思えます。しかし、長期的に考えると必ずしもそうとは限りません。
実際に妻が相続する一次相続においては、妻が多く財産を受け取る方が相続税は軽減されます。しかしその後に妻が死去し、妻の財産を子どもが相続する二次相続が発生すると、子どもは配偶者の軽減制度が使えないため、トータルで相続税が高くなるケースがあるのです。そのため、配偶者の相続対策をする際は二次相続のことも考慮する必要があります。

3-2. 小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、死亡した被相続人が居住用や事業用として利用していた土地の評価額を、一定の要件を満たした場合に減額することができる特例です。小規模宅地等の特例には、特定居住用宅地、特定事業用宅地、貸付事業用宅地の3つの区分があります。
それぞれの区分の減額率、限度面積、要件は以下の通りです。また特定居住用宅地と特定事業用宅地は併用が可能です。

特定居住用宅地
減額される割合限度面積適用要件(いずれかに該当すれば適用)
80%330㎡
被相続人の居住用宅地の場合
  • 被相続人の配偶者である
  • 被相続人と同居していた親族が取得して相続税の申告期限まで引き続き居住している
  • 相続開始前3年以内に本人又は本人の配偶者の所有する家屋に居住したことがない親族である(被相続人に配偶者や同居親族がいない場合に限る)
相続人と同居していた親族の居住用宅地の場合
  • 被相続人の配偶者である
  • 被相続人と生計を一にしていた親族が取得し、相続開始前から相続税の申告期限まで居住している
特定事業用宅地
減額される割合限度面積適用要件(いずれかに該当すれば適用)
80%400㎡
  • 被相続人の事業に使われていた宅地で、被相続人の事業を引継いで、相続税の申告期限までその事業を営んでいる親族が取得した場合
  • 被相続人と生計を一にしていた親族の事業に使われていた宅地で、取得者が相続開始前から相続税の申告期限までその事業を営んでいる場合
貸付事業用宅地
減額される割合限度面積適用要件(いずれかに該当すれば適用)
50%200㎡
  • 被相続人の貸付事業に使われていた宅地で、被相続人の貸付事業を引継ぎ、相続税の申告期限まで貸付事業を営んでいる親族が取得している場合
  • 被相続人と生計を一にする親族の貸付事業のために使われていた宅地で、その生計を一にする親族が取得し、相続開始前から申告期限まで引き続きその自己の貸付事業を営んでいる場合
    (注)相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供している宅地等を除く。)はこの特例の対象から除外になりました。なお2018年3月31日以前から貸付事業の用に供されている宅地等については特例の適用があります。

例えば2億円の特定居住用宅地であれば、減額される割合は80%であるため、評価額は1億6,000万円減額して4,000万円に下げることができます。

4.相続における注意点と対策

ここからは、不動産を含む相続における注意点と対策について解説していきます。

4-1. 早めに相続対策を行っておく

遺産相続には、正確な遺産総額を把握しておくことが重要です。被相続人は、早めに自分の財産目録の作成を行ったり、通帳の保管場所を書き残したりするなど、相続人の負担を減らすための準備をしておくことをおすすめします。
また、被相続人が元気なうちに、相続人を集めて話し合いをしておきましょう。もしも相続人同士が遺産分割で揉めそうな場合は、被相続人があらかじめ公正証書遺言などで財産の分け方について書き残しておく方がスムーズです。

4-2. 生前贈与を活用する

相続税と贈与税は税制が異なり、生前贈与をうまく行うことで将来的な相続税を減らすことができます。贈与税は、1月1日から12月31日までを1年とする暦年課税という課税方式が原則です。

暦年課税においては、年間110万円までが基礎控除額として定められています。そのため、年間110万円までの財産を子どもや孫に対して贈与しても、贈与税はかかりません。ただし、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は、相続の対象となります。このため、贈与者が元気なうちから生前贈与を行っていくことが相続対策としては重要です。

5. まとめ

本文で解説したとおり、3,600万円以下の財産であれば相続税は発生しません。
相続対策を考える際は、まず自分の財産について正確に把握しておくことが必要です。そのうえで、現状では相続税が発生するとわかった場合は、贈与税の基礎控除額の範囲で子どもや孫へ生前贈与を始めたり、現金を相続税評価額が引き下げられる不動産に変えたりするといった方法で相続対策をしておくことをおすすめします。
子どもや孫に大切な財産をより多く渡すためにも、早めの行動を心がけましょう。

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  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。

税務の取扱に関する監修

マックス総合税理士法人マックスソウゴウゼイリシホウジン

プロフィール
掲載記事

渋谷本社、自由が丘オフィスを拠点に、東京都心及び、城南地区の地主や資産家に対し、『民事信託も活用した相続・相続対策、不動産の売買や贈与時の節税』といった資産税コンサルティングを手がける。
毎週末、不動産に関する税務相談会も行っており、ただの税務理論だけでなく、不動産の現場にも精通する知識と経験を備えている。
マックス総合税理士法人http://www.max-gtax.com/

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