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老後資金の上手な貯め方と賢い使い方《使い方編》【FP執筆】

資産運用 老後資金

目次

前回の【貯め方編】では、個人的な経験談を中心に、老後資金の貯め方をご紹介しました。続く【使い方編】では、老後資金としての取り崩し方や、老後資金として使いやすくする方法を考えます。

1. 老後資金は受け取り方を想定して準備手段を考えることも大切

老後資金については、「いくら必要か」「どうやって増やすか」が話題になる機会は多いですが、「どのように受け取るのか」に焦点があてられる機会は多くありません。たとえば、老後資金の多くを株式の個別銘柄で運用している場合、老後にお金が必要になった時、「儲かっている銘柄」を売却するのでしょうか。それとも、損が出ている銘柄を売却して資金を捻出するのでしょうか。

実際に個別銘柄を中心に運用をしている人に、「老後資金の受け取り方」をたずねても、「そのときどきで臨機応変に対応する」という回答しか得られません。株式相場に応じて、臨機応変に売却するのは当然だとしても、お金が必要になるたびに、売却銘柄を考えるのは面倒ですし、相場によってはスムーズにいかないこともあるだろうと考えています。 投資信託を中心に運用をしている場合も、似たようなことが起こるはず。どの投資信託を、いくら解約するかなど、資金が必要になるたびに悩む機会が多くなるはずだからです。株式の個別銘柄や投資信託で老後資金を準備している場合、換金の方法や銘柄の選択など、その都度対応していく必要があります。

話は少し飛躍しますが、認知症と診断されて介護付有料老人ホームに転居することになり、入居一時金が必要になったとします。ところが、認知症と診断された場合は、診断を受ける前に資産を誰かに信託しておかない限り、解約が難しくなります。認知症と診断されると、運用商品などの解約に制限がかかるからです。

老後資金のご相談を受けているとき、「殖やし方」が話題になることはありますが、「使い方」が話題になる機会はほとんどありません。ですが、使い方をきちんと考えながら、老後資金を準備していかないと、いざというときに、お金はあるのに引き出せないことが起こりかねないのです。

2. 年金タイプの商品を利用して自動的に受け取れる仕組みを構築

ところで、前回の記事でご紹介した通り、私は保険と不動産投資の二本立てで老後資金の準備をしています。保険に関しては、複数本の個人年金保険と国民年金基金に加入。受け取り方としては、60歳以降、公的年金が受け取れるまでの空白期間(65歳になるまで)は年金を手厚く受け取れるように設計してあり、公的年金が受け取れるようになってからも、公的年金の上乗せ資金を確保しています。
個人年金保険のメリットは、一定年齢になると自動的に、保険金を分割して受け取れること。分割して受け取れれば、どの銘柄を、いくら売却するかなどについて悩む必要がありません。年金では不足がちの老後の生活費を自動的に確保できるので、生活設計も立てやすくなります。また保険会社の規定の範囲にはなりますが、受け取り開始年齢を遅らせたり、年金の受け取り期間を変えられるのも便利です。

2-1. 個人年金タイプの商品は、税制面での負担増に気を付ける必要がある

個人年金保険は、自動的に受け取れる便利さがある一方で、注意点もあります。大きな注意点は、税金面。公的年金と個人年金保険は、どちらも「雑所得」として申告をしなければならないからです。
たとえば我が家では、65歳になるまでは公的年金が1円も受け取れないので、64歳までは雑所得の控除額(65歳未満60万円※)をまるまる使えますが、65歳になって公的年金を受け取るようになると、公的年金と個人年金保険を合算するため、公的年金控除(65歳以上最低110万円 ※)を超えてしまいます。
個人年金保険では、支払った保険料がある程度は経費と認められるものの、個人年金保険から年金を受け取ると、所得税や住民税、そして住民税額に比例する国民健康保険料や公的介護保険料までアップする可能性があるのです。個人年金保険に加入する際には、受け取れる年金額だけではなく、負担増になる税金分や増税によって比例して増える国民健康保険料や公的介護保険料にも気を配る必要があります。

  • 公的年金以外の所得が1000万円以下の場合

そこで私は増税の影響を抑えるために、財形年金貯蓄も利用しています。財形年金貯蓄は老後資金を貯めるために利用する仕組みで、550万円になるまでに発生した利子は非課税になる特典を持っています。550万円を超えると金融商品と同じように20.315%の課税をされますので、財形年金貯蓄をしている人の多くは、積立額を550万円以内に抑えているようです。
ですが、私は財形年金貯蓄の積立額を、550万円以内に抑えるのはもったいないと考えています。財形年金貯蓄は、550万円を超えても積立を継続できますし、年金として受け取る際に非課税ですむからです。仮に月々20万円などというまとまった年金額を受け取っても、課税されずに済むのは大きなメリットだと思います。
課税されない理由について、積立額が550万円を超えそうになった時、金融庁に聞いてみました。すると、「財形年金貯蓄には年金という言葉が付いていますが、実質的には定期預金などを使った金融商品であり、受け取るときに雑所得に該当する規定はありません」という返事をもらいました。つまり財形年金貯蓄で積み立てたお金には、積立額が550万円を超えると20.315%の利子課税はされるものの、受け取る際に雑所得に該当しないことになります。一般的な金融商品でも、20.315%の利子課税をされるわけですから、課税されることがデメリットとはいえません。

さらに主人の会社では、財形年金貯蓄の積立に対し、年に3%の奨励金が付与されています。奨励金が付く積立の上限額は100万円ですので、我が家では毎年3万円をもらっています。財形年金貯蓄はすでに15年以上続けていますので、すでに50万円近い奨励金を受け取っている計算になります。
奨励金については、一般財形貯蓄に付与している会社もあります。財形貯蓄の利用者がかなり減っていることから、利用者を増やすために奨励金の制度を導入する会社が増えているわけですが、実際に奨励金制度のある会社では、その利率を3%にしているケースが多くなっています。勤務先に財形貯蓄の制度があっても積立をしておらず、奨励金をもらい損ねている人が多いのは、もったいないことだと感じています。

3. 家賃を受け取っても、不動産の価値は毀損しない

もうひとつの不動産投資について。家賃については、毎月管理会社から、経費を引いた金額が振り込まれています。もちろん、家賃を超える修繕費が掛かることもありますが、「不労所得」に当たるお金を定期的に受け取れるのはありがたい話です。この先、年金生活に入ったら、そのありがたみは増していくと考えています。

また不動産の場合、家賃を受け取っても、不動産としての価値が減っていくわけではありません。いつかは建て替えが必要になるとはいえ、前回、アパートを建てた時と同じ流れで借り入れをして、建て直しをすればよいと考えています。
前回、建て直したときは、ローンの返済期間を10年程度に短く設定し、ローンの返済中は家賃とほぼ相殺する形で、自由に使えるお金はほとんどありませんでした。返済が早く終わることを優先したからです。この先、老後に建て直す際は頭金を多めに入れて、家賃が少しは手元に残るプランにするつもりです。

ここまで保険と不動産についてお話ししましたが、運用商品については「余裕資金」ととらえて保有を継続する予定です。株式で運用しているお金は換金しづらいため、そのお金を換金しなければならない事態がおとずれない限り、そのまま保有していくつもりです。
価格が日々変動する運用商品を利用して、定期的に受け取る仕組みを作るのは難しいですし、換金した分だけ資産価値が減ってしまうことも不安に感じます。家賃を受け取っても不動産の価値は毀損しませんが、貯金や運用商品は、受け取れば資産価値は減ります。両者の根本的な違いは、「資金の減少期」に入る老後には心理的な影響が大きいのではないかと考えています。

また前回の記事で書いた通り、老後資金を準備するには、自分の性格に合った方法を利用することが重要です。たとえば保有している運用商品の価格が大きく下がった時に、売却や銘柄の入れ替えができずにただ保有してしまう人は、価格変動が穏やかな不動産商品を組み込むことを検討してはいかがでしょうか。不動産小口化商品は、一般的な金融商品に比べて利率が高めに設定されていますし、老後のどこかでお金が必要になった時は、一部を取り崩して生活費に充てられます。何より安心なのは、取り崩さなければ、投資元本の価値を保てること。運用対象の異なる商品を保有することは、資産設計を考える際のリスク軽減にもつながるはずです。

記事執筆:畠中 雅子(ファイナンシャル・プランナー)

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  • 本記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。掲載されている情報は、予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
  • 本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、資産運用・投資・税制等について期待した効果が得られるかについては、各記事の分野の専門家にお問い合わせください。弊社では、何ら責任を負うものではありません。
写真:畠中 雅子

記事執筆

畠中 雅子はたなか まさこ

ファイナンシャル・プランナー

プロフィール
掲載記事

新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などをおこなう。高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、ひきこもりのお子さんを持つご家庭に生活設計のアドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。著書は「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿』」(ぱる出版)「ひきこもりのライフプラン」(岩波書店、斎藤環氏との共著)ほか、60冊を超える。
http://miniatureworld.jp/
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